女性じょせいは29歳さいの時ときに「子宮しきゅう体たいがん」と診断しんだんされ、子宮しきゅうの全ぜん摘を行おこないました。

今いま、増加ぞうか傾向けいこうにある「子宮しきゅう体たいがん」は若わかい世代せだいでも直面ちょくめんするケースがあります。同どう世代せだいにもっと知しってほしいと、取材しゅざいに応おうじてくれました。

（ネットワーク報道ほうどう部ぶ 記者きしゃ 金澤かなざわ志こころざし江こう）

“なんともないっしょ”と思おもってた

新潟にいがた市しのヒダノマナミさんに異変いへんがあったのは、8年ねんほど前まえ。

生理せいりの周期しゅうきではないのに、下着したぎに血ちが。

不正ふせい出血しゅっけつがみられるようになりました。

ただ、もともと生理せいり不順ふじゅんだったこともあって、気きにすることはなかったといいます。

当時とうじ28歳さい。

勤つとめていたアパレル会社かいしゃで責任せきにんのあることを任まかせられるようになり、仕事しごとが楽たのしくなっていた時期じきでした。

「仕事しごとも忙いそがしかったし、血ちがちょっとついてるくらいだから大たいしたことないかなと思おもっていて、痛いたみもなかったので『何なんともないしょ』って思おもっちゃっていました。子宮しきゅう体たいがんはそもそも知しらなかったし、がんになるなんて全まったく浮うかばなかったですね」

「病院びょういんに行いったほうがいいよ」

異変いへんに気付きづいてからしばらくして、同僚どうりょうにすすめられ、近ちかくのクリニックを受診じゅしんしました。

すると、「子宮しきゅうにポリープがある」と言いわれます。

経過けいか観察かんさつをしていましたが、次第しだいに症状しょうじょうは悪化あっかします。

生理せいりの時ときの経けい血ちが大量たいりょうになり、トイレが血ちだらけになるようなことも。

腹痛はらいたと吐き気はきけもひどくなり、ついに救急きゅうきゅう車しゃで搬送はんそうされました。

ヒダノさん

「四よつんばいになってはってトイレに行いって吐はきながら、血ちも大量たいりょうに出でていたので貧血ひんけつで目めもチカチカしてきて。本当ほんとうにやばいなという状態じょうたいでした。その時ときはもう必死ひっしで、自分じぶんではもうどうしようもないから家族かぞくに救急きゅうきゅう車しゃを呼よんでもらって」

“なんで私わたしが”

いくつかの病院びょういんをまわった後のち、告つげられた病名びょうめいは「子宮しきゅう体たいがん」。

ヒダノさんにとって、聞きき慣なれない病名びょうめいでした。

最初さいしょに不正ふせい出血しゅっけつがあってから1年ねんがたっていました。

ヒダノさんは、子宮しきゅうと卵巣らんそうを摘出てきしゅつする手術しゅじゅつを受うけることになりました。

手術しゅじゅつ後ご、医師いしが子宮しきゅうの図ずを書かきながら、ヒダノさんに症状しょうじょうについて説明せつめいします。

『子宮しきゅうの中なかは全部ぜんぶがんで埋うまっていましたよ』

診断しんだん結果けっかは「ステージ4」でした。

ヒダノさん

「ステージ4って結構けっこうパワーワードじゃないですか。この時ときが1番ばん『ああ、がんなんだ』っていう感かんじで大だい泣なきしたのをよく覚おぼえています。どこかで『なんとかなるでしょ』みたいなのをずっと思おもっていて、先生せんせいも『たいしたことなかったよ』って言いってくれるはずだと思おもったけど、意外いがいとすごいひどいんだな、なんで私わたしがって」

増加ぞうか傾向けいこうにある子宮しきゅう体たいがん

子宮しきゅうがんは2種類しゅるいに分わかれています。

子宮しきゅう下部かぶにあたる子宮しきゅうけい部ぶにできる「子宮しきゅうけいがん」は、2年ねんに1度どの検診けんしんや予防よぼうのためのワクチン接種せっしゅが国くにで推奨すいしょうされています。

一方いっぽう、子宮しきゅうの上部じょうぶの子宮しきゅう体たい部ぶにできる「子宮しきゅう体たいがん」は、特有とくゆうの予防よぼう方法ほうほうは確立かくりつされておらず、国くにが指針ししんとして定さだめている検診けんしんもありません。

国立こくりつがん研究けんきゅうセンターの統計とうけいでは「子宮しきゅうけいがん」のり患りかん者しゃ数すうは減少げんしょう傾向けいこうですが、「子宮しきゅう体たいがん」は増加ぞうか傾向けいこうにあります。

東京とうきょう医科いか歯科しか大学だいがくの寺内てらうち公一こういち教授きょうじゅは、ライフスタイルの変化へんかが背景はいけいにあると指摘してきします。

「女性じょせいホルモンを原因げんいんとするケースが多おおく、その場合ばあい、肥満ひまんや高こう血圧けつあつ、糖尿とうにょう病びょうなど生活せいかつ習慣しゅうかんの欧米おうべい化かに伴ともなう生活せいかつ習慣しゅうかん病びょうの増加ぞうかと関連かんれんすることが知しられています。また妊娠にんしんやお産おさんをしていないことも関連かんれんすることが知しられています」

「子宮しきゅうの内うち膜まくは、月経げっけいの周期しゅうきとともに増殖ぞうしょくをしては剥奪はくだつするということを繰り返くりかえしていますが、妊娠にんしん・出産しゅっさんをしないと何なん十じゅう年ねんも継続けいぞくすることになりますので、少子しょうし化かも子宮しきゅう体たいがんの増加ぞうかと関連かんれんするということもあると思おもいます」

“子こどもの顔かおを見みてみたかった”

子宮しきゅうの全ぜん摘が標準ひょうじゅん治療ちりょうとされる子宮しきゅう体たいがん。

患者かんじゃは40代だいから増ふえ、50～60代だいが一番いちばん発症はっしょうしやすいと言いわれています。

一方いっぽう、若わかい世代せだいも発症はっしょうしていて、2019年ねんは20代だいと30代だいで735人にんがり患りかんしていました。

子宮しきゅう以外いがいにも転移てんいがあり、全ぜん摘する以外いがいに選択肢せんたくしがなかったというヒダノさん。

その後そのご、抗こうがん剤ざい治療ちりょうも行おこないました。

体調たいちょうが回復かいふくし、生活せいかつに余裕よゆうができたいま、考かんがえるのは子こどものことだといいます。

ヒダノさん

「当時とうじはとにかく『子宮しきゅうと卵巣らんそうをとります』と言いわれても、子こどもうんぬんよりも自分じぶんが生いきることに必死ひっしだったんだと思おもいます。いまになって『子こどもの顔かおを見みてみたかったな』みたいな感情かんじょうが強つよく出でてきているので、ちょっとしんどいです」

「妊婦にんぷさんをみると結構けっこうつらくなっちゃうのでなるべく見みないようにとか。そういうネガティブな感情かんじょうももちろんあります。でも、もう人生じんせいは変かえられないから」

早期そうき発見はっけんであれば出産しゅっさんまで温存おんぞんできるケースも

寺内てらうち教授きょうじゅによると、子宮しきゅう体たいがんは最終さいしゅう的てきには子宮しきゅうの全ぜん摘が必要ひつようとなりますが、女性じょせいホルモンが原因げんいんの患者かんじゃが強つよく妊娠にんしんを望のぞみ、早期そうき発見はっけんであることや筋肉きんにくへどれぐらい食い込くいこんでいるかなど一定いっていの条件じょうけんを満みたせば、ホルモン治療ちりょうで妊娠にんしん・出産しゅっさんまで温存おんぞんできる可能かのう性せいがあるケースもあるといいます。

だからこそ、自覚じかく症状しょうじょうがあることが多おおいとされる子宮しきゅう体たいがんは、早期そうきの受診じゅしんが大切たいせつだといいます。

寺内てらうち教授きょうじゅ

「今いまは出産しゅっさん年齢ねんれいが高たかくなり、発見はっけんされた時ときには出産しゅっさんを経験けいけんしていない方ほうもどんどん増ふえていて、妊よう性せい（子こどもを産うむ力ちから）を温存おんぞんできるかという問題もんだいが大おおきくなっています。子宮しきゅう体たいがんでは月経げっけいとは異ことなる出血しゅっけつがみられるのは90％というデータもあります。若わかい女性じょせいであれば月経げっけいが不ふ規則きそくだとその後そのごの子宮しきゅう体たいがんにつながることも知しられているので、そういう方ほうは早はやめに婦人ふじん科かを受診じゅしんしてもらう必要ひつようがあります」

“若わかい世代せだいに知しってほしい”

若わかい人ひとたちにも子宮しきゅう体たいがんについて知しってほしい。

ヒダノさんはみずからの闘病とうびょうの様子ようすをブログで発信はっしんしています。

抗こうがん剤ざいで髪かみが抜ぬけたあとどんなウィッグを使つかっているか。

入院にゅういんの際さいに何なにが役立やくだったか。

自分じぶんが子宮しきゅう体たいがんと診断しんだんされたときに得えられなかった、当事者とうじしゃが知しりたい情報じょうほうを細こまかく記しるしています。

みずからの体験たいけんをSNSやYouTubeでも伝つたえてきたヒダノさん。

がん患者かんじゃどうしのコミュニティーも生うまれています。

ヒダノさん

「若わかい世代せだいでも、子宮しきゅう体たいがんになるっていうことを伝つたえていきたいですし、若わかい女の子おんなのこに見みてほしいです。不正ふせい出血しゅっけつで異変いへんを感かんじた段階だんかいで何なにかの病気びょうきかもしれないと思おもってしっかり婦人ふじん科かを受診じゅしんして診断しんだんをうけていれば、もしかしたら子宮しきゅうを残のこすことができて、子こどもがいたかもしれないとか、そういう思おもいがあるので。不調ふちょうを感かんじたらすぐ医者いしゃに行いってもらいたいです」

子宮しきゅう体たいがんは早期そうき発見はっけんできる機会きかいはある。

そして、子宮しきゅう体たいがん患者かんじゃは一いち人にんじゃない。

ヒダノさんは、きょうも発信はっしんを続つづけます。

4月つき8日にち（月つき）ニュースーン、9日にち（火ひ）首都しゅと圏けんネットワークで放送ほうそう